aptpod Tech Blog

株式会社アプトポッドのテクノロジーブログです

Salesforceを1年運用してみての気付きと改めて考えるSFA導入の意義

aptpod Advent Calendar 2024 12月2日の記事です。

みなさまお久しぶりです。アプトポッドで営業企画をしている神前(こうさき)と申します。

またもや前回の登場から1年です。4年連続でAdvent Calendarのトップバッターをやっているので、もはや風物詩ですね。

さて、昨年はSalesforceの導入について書いたのですが、今年は運用を1年回してみての感想と、その中での気付きについて書いていきたいと思います。

Salesforceに限らずになにかのシステムを導入する際に、導入するまでも大変だったりしますが、本番はその運用です。いざ導入したけども現場の人は使ってくれなければ宝の持ち腐れです。

導入してみたけどどうも現場に定着しない、使ってもらえてはいるけどもどうも深く使ってくれてはいない、そんな悩みを持っている人に届くと嬉しいです(想定読者が狭い)。

今年やったこと

この1年間でやったことは、大きく2つにわけることができます。

  1. 実運用にあわせた改善
  2. 他ツールと連携したSalesforce周辺の改善

それぞれもう少し詳細をみていきます。

実運用にあわせた改善

昨年の10月から本番運用を開始し、しばらくは実際に現場で使ってもらったフィードバックを元に改善をすすめていました。といっても、劇的に使い勝手が変わるような改善をするのではなく、むしろ項目やフローの追加、整理といった、小さいものを中心にとにかく数多くこなしていきました。

運用開始当初は「操作方法がわからない」、「エラーがでてやりたいことができない」といった問い合わせも多く、その都度対応していましたが、現在ではそういった問い合わせも月に一度あるかないかといったレベルまで使い慣れてもらったと思います。

来た問い合わせに対応するのはもちろんのことですが、自分から課題を拾いに行くことも意識していました。打ち合わせの合間に雑談として操作感をヒアリングしたり、困り事がないか確認するのもそうですが、実際に入力された案件(デフォルトだと「商談」ですが弊社では「案件」と名称を変更しています)の内容を日々眺めることで、使われている項目、使われていない項目はわかりますし、操作に苦慮している部分もなんとなくわかってきます。そこから、自分で実際に操作をしてみて、手間がかかる部分や使いにくい部分、あるいは、あったら便利なフロー等を推察し、時にはアイデアを現場にあてながら改善をすすめました。

運用から半年ほどは主に、直接Salesforceを触る現場の営業メンバーを中心に、言い換えると、「対社内」向けの改善を重点的にすすめてきた形になります。

ちなみに、昨年のブログで紹介をしたフローもリファクタリングを実施し、コンパクトに、かつ、シンプルにすることができました。

他ツールと連携したSalesforce周辺の改善

それに比べ、直近の半年ほどは、「対社外」を意識した改善をすすめてきました。

実際の操作感をよくする、ちょっとしたことをフローを使って自動化して便利にする、というのがだいぶ落ち着いたので、自社で使ってる他のツールとの連携を、フローをうまく活用しながら構築したり、エンドユーザーに送るメールを自動化させたりすることをすすめてきました。

一つの例として、Zendeskとの連携を強化があります。

Zendeskとは、クラウドベースのカスタマーサポートツールなのですが、およそ1年半くらい前に導入をしています。当時はSalesforceの導入が決まり、カスタマーサポートもSalesforceを利用するか検討したのですが、シンプルなツールとしての使いやすさからZendeskになった、という経緯があります(なお、カスタマーサポートの担当が弊社では別にいたため、このあたりの経緯については私自身は直接関わっていたわけではありません)。

現在ではお問い合わせのほとんどがZendeskを経由してくるようになるまで利用されているのですが、改善前まではSalesforceとの連携面が弱く、だれが問い合わせをしてきているかはもちろんわかるものの、その問い合わせがどの案件についての問い合わせかがすぐにわからない等の課題がありました。

そこで、まずは案件に自動連番でユニークな「案件番号」というものを案件作成時に生成し、案件内の項目である「納品日」になると、案件に紐づいたエンドユーザーの担当者さんにメールでZendeskの案内と、お問い合わせの際には案件番号をフォームに入力してもらうように依頼するように自動化しました。

これにより、もれなくエンドユーザーさんに対して問い合わせの窓口であるZendeskの案内ができ、かつ、問い合わせがあった際にも、どの案件についての問い合わせかがすぐにわかるようにできました。

これはあくまで一例ですが、ZendeskとSalesforceの連携強化について他にいくつか実施しています。

Zendesk以外にも、一部のパートナーさん向けのポータルサイトの構築と公開や、エンドユーザーさん向けのポータルサイトの構築をすすめています。

前半(実運用にあわせた改善)に比べると、改善の影響範囲が社内から社外へ広がり、関わるツールもSalesforce以外のものまで含めてだいぶ広くなったと思います。

閑話休題

話は変わるのですが、昨年のAdvent Calendarで書いた記事がSalesforce社の人の目にとまったようで、今年の夏頃にCustomer Evangelistのバッジをいただけました。

袋にいれてとっておいてあるバッジ

自身としては、構築や運用を四苦八苦しながらやってきたものをブログで書いただけなので、特段エヴァンジェリストとしての何かを意識して日々活動をしていたわけではないのですが、なんと今年の10月にこのバッジをいただいたことがこ゚縁となりSalesforce社でのイベントに登壇させていただくこととなりました(貴重な場をいただきありがとうございました)。

Salesforce社が主催で、Salesforce社のオフィスで開催するにも関わらず公式のイベントではない(と当日に話されてました)という摩訶不思議な立ち位置のイベントではありましたが、自身にとってもよい機会となりました。

当日は導入から3年未満くらいの立ち上げ初期のユーザーさんを対象に、私自身が実際に苦しんだところや、導入をしてから現場に使ってもらうためにやってきたことをお話したのですが、その際にでてきた質問や、参加されていた方の状況を聞くことで、色々な気付きがありました。

SFAはどのように構築、運用していくべきなのか

※以下に記載することは神前個人の所感です。また、以下に記載することが弊社で実現できているというわけではないことをあらかじめ記載しておきます。

この1年半強の構築と運用、そして、先日のイベント登壇を経て、改めてSFA(=Salesforce)を導入する理由、目指すべきゴールはどこなのかを振り返ってみました。

導入をしたそもそもの経緯の詳細は昨年のブログ記事をご覧いただくとして、大きく言えば、ERPや勤怠システムといった他のツールとの連携による全体最適化が導入の目的だったと言えます。これまで連携をしておらず、バラバラだった各ツールをSalesforceを中心にリプレイスしていくことで、データの二重入力や二重管理を防ぐ、つまり、一つ一つは小さいけど、積み重なるととてつもない無駄になる作業を排除していくことが目的でした。

実際に、導入から運用を開始してから半年ぐらいはそのように動いていました。ですが、それもある程度整ってくると、もちろん日々状況は変化するので要望がつきることはないものの、だいぶ落ち着いてきます。

そこからは方向転換をして、これまで手が回ってなかったこと、他のツールとの連携を活用していくことになるわけですが、とはいえ、どういう方向で動いていくべきかについては様々な選択肢があります。マイナスをゼロにしていく作業はわかりやすいのですが、ゼロをどうプラスにしていくのか、どこをプラスにしていくのかは色々考えられるからです。

先に、どういう方向性で動いていくべきかについて書いておくと、「SFAは、各ユーザー(経営層、マネジメント層、プレイヤー層)の意思決定の速度向上を最大化する方向性で構築、運用するべき」と現段階では考えています。

よくある光景

なぜそのように考えるに至ったかをもう少し掘り下げていきます。

SFAを導入しているのであれば、案件(商談)やリードの管理、目標に対しての現在の進捗といったものはある程度可視化できていると思います。

弊社でもそうですが、おおよその営業組織は、週一などの頻度で定例を開き、Q単位での進捗や各案件の進捗等を共有することと思います。そうした中で、例えば「残り◯◯日で今Qの目標に対して◯◯円足りない」みたいな場面はよくあることと思います(あるいは、今Qはいいけど、翌Qのパイプラインが足りない、年間での目標達成があやしそうだ、等)。

そうした時に、以前も弊社ではよくあったのですが、「とりあえずいまの状況をレポートでまとめて現状を詳細に把握しよう。それを次回の定例で確認して対応策を考えよう」となりがちではないでしょうか。レポートをまとめるのは私のように事業部にいる非営業メンバーだったり、あるいは経営企画のような立ち位置の人が担当すると思いますが、翌週になってそのレポートをみんなで眺め、あれこれ対策を考えるものの、場合によっては「では、次回にこのレポートの情報をもとに、それぞれ対策を考えてきて発表しよう」、さらにその翌週に「では来週に今回でたアイデアの中からどれを実施するか決めよう」みたいなことになります。実際にはこんなに悠長に時間を使うことはないと思いますが、とはいえ、「目標達成があやしいぞ」となってから「どのように動くべきか」が決まるまでに1週間、2週間費やしてしまうこともままあることだと思います。このように時間を使ってしまえば、方針が決まってから動いてももうリカバリーができなかったり、当然時間が経過しているので、今Qだけでなく、翌Qにすら影響がでることも考えられます。

私見ではありますが、営業の成績は、その人、あるいはその組織がとったアクション量に比例すると考えています。上記のような例ですと、方針が定まらない限りメンバークラスはアクションを取りづらく、通常の営業活動にプラスアルファでなんらかのアクションをとらないといけないにも関わらず、それをできずに時間を消費してしまうわけです。

私自身他社さんの事例を多く知っているわけではないですが、しかし、こうした光景はわりとよくある光景なのではないかと考えています。

SFAはどう寄与できるか

案件(商談)は管理できている、現状の進捗も可視化できている、でも意思決定にまで寄与できていないのであれば片手落ちなのではないでしょうか。

例えば、各営業メンバーそれぞれの平均商談日数や、新規開拓と既存のお客様の深耕営業のどちらが得意なのか、それぞれの平均受注金額はいくらなのか、どういう業界が得意なのか、どういう規模の企業が得意なのか、etc.といったことが可視化されていればどうでしょうか。

ダッシュボードのサンプル(数字は隠してます)

ここまで可視化されていて、リアルタイムにモニタリングできていれば、あとは逆算していけば各々がとるべきアクションは自然と決まってきます。

不足分が◯◯円だから、おおよそ◯案件分の受注が必要、残りの期間が◯◯日だから、平均商談日数をみると新規開拓よりも既存顧客へのアプローチのほうが可能性がある、深耕営業が得意なのはだれで、平均アプローチ数は◯回だから、これから一週間Aさん、Bさん、Cさんは既存顧客にたいしてこういう風にアプローチをしてください、それをデイリーで結果をみていきましょう、といった感じです。

ここまで落とし込めれば、あとは実行してその結果をみる、というPDCAをすぐに回せます。

これは必ずしも事業部単位だけの話ではなく、個々の営業メンバーの目標達成という観点でも活用できます。

極端な言い方をすれば、「いかに考える時間を減らして、行動のための時間を増やすか」ということです。

自分たちにとってのキーはなにか

ただし、商談を受注へともっていくための重要なキー、指標はそれぞれの会社さんで異なると思います。訪問回数が大事、という企業さんもあれば、商談と商談の期間が大事であったり、あるいは、商談の中で製品のデモをやったかどうかが大事、といった企業さんもいるかもしれません。

さらに言えば、そうした指標とは別に、マネジメントレイヤーが各営業メンバーのどういった数値に着目してマネジメントをしているか、といったことも千差万別です。

何が言いたいかと言うと、「どの指標が自分たちにとって大事なのかは自分たちで見つけなければならない」ということです。

これさえやれば営業成績が向上する、といった銀の弾丸はありません。自分たちにとっての銀の弾丸を探るために、レポートで色々可視化をしていく、可視化をするために案件(商談)やリードに色々なデータをとってみる、という模索の期間が必要なのではないかと思います。

チームで立ち向かう

話を少し戻しまして、Salesforce社でのイベントで登壇をした際に、いくつかメッセージを発信したのですが、その中の一つに「とにかく現場に飛び込もう」というものがありました。

意図としては、管理者として現場と一線を引いて構築、運用をするのではなく、実際に使うユーザー(=営業メンバー)と同じ目線で改善ができるようになりましょう、という内容なのですが、いま考えると、実はこれがかなり大事なことなのではないかと思うようになりました。

自分たちにとっての重要なキーを探るためには、管理者が一人でがんばっていても限界があります。実際に現場に飛び込み、営業メンバーが何を指標としているのか、あるいは、指標をさぐるためにはどんなデータが必要なのか、そして、とったデータをどうすればシステムとして可視化できるかを共に探り、作り上げていく必要があります。同様に、マネジメントレイヤーが何をみているのか、どういうデータがあれば意思決定の時間を少しでも短く出来るのか、そしてそれをシステム上でどう表現するのかといったことも、一方通行ではなく双方向に協力をしていく必要があります。

つまり、管理者対ユーザーという関係性ではなく、管理者も現場も関係なく、同じ目的をもった一つのチームとして組織の壁を超えて協力をしていく必要があるのです。そうしたチームをつくるための第一歩が、現場に飛び込む、ということなのだと私は考えています。

3者のコミット

個人的には、Salesforceに限らず、SFAを導入するのであれば、管理者と営業の現場メンバー(マネジメントレイヤー含む)に加えて、経営層のコミットもSFAの十全な活用、運用には必要と考えています。

というのも、せっかく構築をして、運用を開始しても、経営層が使わないのであれば結局現場は使わなくなるからです。

Salesforceにはレポートの他にもダッシュボードがあり、そこでリアルタイムに営業活動で重要な情報はみることができます。それにもかかわらず、例えば経営会議ではSalesforceにはいっているデータをcsvで出力し、それをスプレッドシートで加工をしてパワーポイントに落とし込んでるようであれば意味がありません。もちろん、すべてがすべてダッシュボードを見れば済むということはないでしょうが、少なくともダッシュボードをみればわかるものはダッシュボードをみればいいわけです。率先垂範という言葉がありますが、トップから率先して使うのが、現場に定着させるためには大きな効果があるのは間違いありません。

経営層が「導入することにしたからあとはよろしく」、現場やマネジメントレイヤーが「上から言われたからとりあえず使います」、管理者が「営業のことはわからないので、とりあえずやりますけど、細かいことはなにかあったら言ってください」といった状態では、改善もすすみませんし、運用が定着するわけありません。

幸い、弊社は規模が小さいこともあり、3者のコミットはできていますが、もし自社はそうではないな、と感じるようであれば、機能を充実させるよりもまずは3者がコミットできるようにコミュニケーションを開始するところから手を付けたほうがよいかもしれません。

まとめ

長くなってきたのでそろそろ締めたいと思います。

昨年の記事から1年を通して、自分なりにはよい活動ができたのではないかと思っています。ですが、それは自分がたまたま元々営業の経験があり、現場とコミュニケーションをとりやすかったり、現場がとても協力的であったり、あるいは、こうしたシステムをいじるのが性に合っていたからという幸運に恵まれていたからだと思います。

いま現在管理者をやっている方の中には、そうではない方もいることでしょうし、何から手を付けていけばいいかもよくわからない、という方もいると思います。

そうした中で、そもそもなんで導入をするのか、という原点に立ち返って、一人で抱え込まずにまわりに仲間を増やし、チームで立ち向かっていくことが、時間はかかるものの、唯一のできることなのではないかと思います。

本記事が少しでも参考になっていると幸いです。

それではまた1年後にお会いしましょう!