aptpod Tech Blog

株式会社アプトポッドのテクノロジーブログです

Starlinkを使ったデータ収集(通信速度・遅延測定)

はじめに aptpod Advent Calendar 2023 12月14日の記事です。

こんにちは。ハードウェアグループの織江です。

弊社では主に4G/LTEや5Gといったモバイル通信網を利用した移動体からのデータ収集や制御を行っていますが、今回はそれに加えて衛星通信を使って利用できる環境を広くすることに挑戦しました。

Starlinkとは

biz.kddi.com

スペースX社が開発した衛星ブロードバンドインターネットです。特徴としては従来の衛星通信で使われていた静止軌道上(地上約36,000㎞)の衛星と比較して低い軌道(2000㎞以下)で周回する衛星を用いたネットワークで従来の衛星通信よりも帯域が広く、遅延が少ないネットワークです。

今回使ったのはKDDIのStarlinkBusinessプランです。

今回のプランにはアンテナ設置のためのスタンドが含まれていないのでアンテナを移動させながら計測するために、電源やWiFiルーターをセットにして持ち運びやすいようにアルミフレームに適当に括りつけました。

アルミフレームで持ち運びしやすくしたStarlink

屋外で計測するためにモバイルバッテリーを用意しましたが、Starlinkは消費電力が大きい(ピーク消費電力を実測したところ約190W)ので十分余裕のある電源を用意する必要があります。 今回利用したモバイルバッテリーはJackeryのPORTABLE POWER 1000です。

Starlinkのセットアップは専用のアプリをインストールしたスマホがあると数分で初期セットアップが完了します。注意点としては屋外でWiFiを利用する場合5GHz帯の周波数を使わないないようにセットアップするのがポイントです。専用アプリで屋外モードとして設定するとよいです。誤って設定してしまった場合電源を6回連続でタイミングよく抜き差しすることで工場出荷状態に戻せるのはちょっと便利な機能でした。

Starlinkの通信速度測定

Starlinkは室内では衛星と通信できないのでアンテナをビルなどの障害物の少ない屋外に設置する必要があり、理想的と思われる広い公園で試験を行いました。(Starlinkにとって通信環境がよい場所がLTEにとって通信環境が良いとは限らないので今回の測定は比較の一例だと考えてください。)

障害物の少ない広場(潮風公園)

まずはWindowsPCをWiFi経由でStarlinkまたはLTEに接続した場合の通信帯域を計測します。少しばらつきがあるので今回は3回測定して平均をとることにしました。

google speedtestによる通信帯域の計測
計測結果は下り156.1Mbps上り5.80Mbpsとなり、下りは早いと言えますね。一般的なLTE cat.7の通信モジュールよりも数倍速いです。それに対して上りはLTEの半分くらいです。市街地に居ると恩恵がわからないですが、この通信帯域は洋上や山間部での通信となると超高速と言って良いでしょう。

intdashに使う場合のネットワーク遅延評価

改めて弊社のintdashの標準的なデータ収集のユースケースを紹介します。移動体から発生する計測データをクラウド上にアップストリームし、閲覧者側がクラウドにアクセスする形になっています。Starlinkとintdashが稼働する弊社のエッジコンピューター(EDGEPLANT T1)はWiFi経由で簡単に接続することが可能です。

intdashを用いたデータ収集

こちらのように移動体から発生した計測データをクラウドにアップロードする無線区間で上り帯域を広く利用しており、この無線区間が通信可能エリアの境界付近だと通信全体のボトルネックになりがちです。クラウドからデータの利用者へは光ファイバー網や無線区間も含むこともありますが下り方向なので上りに比べてボトルネックになるケースは少ないです。今回の遅延評価を行うにあたりネットワークの限界付近の挙動はどうしても不安定になるので今回は軽めに1.5Mbps程度のアップロードを行いました。

負荷をかけた状態でのネットワークの遅延はintdashを使いながら付随する機能で同時に計測を行うことができます。得られた遅延は上記の表の通りでStarlinkのネットワークの遅延(RTT)は約45msとなり、予想していたよりも十分小さくスムーズなストリームが維持されており、intdashとの親和性は良好だと感じました。LTEに比べるとStarlinkのほうが遅延が少し大きめになる傾向が得られましたが、LTEよりも長い経路をたどっているためだと思われました。speedtestだけでは測定できない遅延があるのはStarlinkの地上側のネットワークの経路によっては今回使った東京エリアのサーバーまでの経路が特別短いわけではないという可能性が高いです。帯域内の速度であればLTEとほとんど遜色なく通信できているという感触です。

まとめ

  • Starlinkは消費電力が大きい(最大約190W)
    最大190W、アイドル時80W、通信時110W前後で、ポータブルバッテリーで長時間稼働させたりするのは難しそうです。

  • Starlinkはダウンリンクに特に強い(156.1Mbps)
    インターネットをブラウジングする程度では衛星通信をしている感覚がないほど高速です。

  • Starlinkのアップリンクはそれほど速くない(実測5.8Mbps)

一般的なインターネットの通信速度をアピールする宣伝文句はたいていの場合下りの帯域を大きく取り上げる傾向にあります。これは一般消費者のインターネットの利用用途が下りが圧倒的に多いからです。
私たちがこのStarlinkを取り上げる意義としてあまり評価されていないほうの上り帯域のレビューという側面が強いです。今回Starlinkを評価してみて極端にダウンリンクに性能が振ってあるネットワークだと感じました。ただ、それでも通信すべきデータを適切に圧縮したりすることで十分利用価値の高いネットワークだと感じました。

弊社のintdashと簡単に疎通させることができるので合わせてぜひご検討ください。 無料のトライアルも受けつけておりますのでぜひお問い合わせください。

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