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株式会社アプトポッドのテクノロジーブログです

クラウド対応型 USB/CANインターフェイス「EDGEPLANT CAN-USB Interface」のご紹介

はじめに

こんにちは、アプトポッドの岩田です。

今回は、当社のCANバス接続用USBデバイスの「EDGEPLANT CAN-USB Interface」と、それに付属する自動車計測向けクラウドサービスの「intdash Automotive Pro」についてご紹介したいと思います。

EDGEPLANT CAN-USB Interface とは

EDGEPLANT CAN-USB Interface(EP1-CH02A)は、自動車のCAN*1バスに接続して、CANデータを取得するための小型のUSBデバイスです。 車載したゲートウェイ装置などとUSB接続することで、簡単にCANバスからデータを取得できます。


本製品の特徴は以下の通りです。

  • Y分岐ケーブルを使用して、同時に2チャンネルのCANバスに接続可能
  • TCXO(温度補償型水晶発振器)搭載、高い周波数精度とタイマー分解能
  • CANフレーム受信直後のタイムスタンプを付与してUSBホストに受け渡し
  • デイジーチェーン方式のSync線共有機構、複数機器のクロックを同期可能
  • USB Type-Bコネクタで手軽にゲートウェイ装置へ接続可能
  • 高保持力USBコネクタを採用し、意図しないコネクタ挿抜を防止
  • USBバスパワーによる駆動で配線を簡略化
  • 別売のアナログ入出力インターフェイス*2アナログ信号と同期計測も可能
  • ファームウェア・デバイスドライバーを当社Webサイトにて公開*3


また、より詳細な技術仕様は以下の通りです。

  • 【定格】5V、100mA、0.5W
  • 【適合規格】FCC Class A、CE
  • 【ESD】IEC 61000-4-2, Air ±8kV, Contact ±4kV
  • 【インターフェイス】CAN 2ch、USB Type-B Full Speed(12Mbps)
  • 【ボーレート】最大1Mbps(33, 50, 83, 100, 125, 250, 500 kbps 切替え)
  • 【終端抵抗】なし
  • 【使用温度】-20℃~+75℃
  • 【外形寸法】61mm × 77mm × 26mm(幅 × 奥行き × 高さ)
  • 【質量】 約120g


その他の詳細な技術仕様は、当社Webサイトの製品ページからご覧いただけます。 データシート等もご用意がありますので、ご興味をお持ちいただけた方はこちらよりご確認・お問い合わせください。

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EDGEPLANT CAN-USB Interface の特長

EDGEPLANT CAN-USB Interface も、Vector社やPEAK-System社など自動車計測用機材を扱っているその他企業のUSB/CANインターフェイス製品と同様に、CANバスに接続することで、USB接続したゲートウェイ装置やPCに対して、受信したCANフレームを利用可能とするデバイスです。

デイジーチェーン型のSync線共有機構

本製品で特徴的なのはデイジーチェーン型のSync線共有機構(タイムスタンプの同期機構)です。複数の CAN-USB Interface をデイジーチェーン(いわゆる "数珠つなぎ")で接続することにより、分配器やSyncのための親機を用意することなく複数デバイスを同期できます。

他社製品では、エントリーモデルにはハードウェア同期機構がついていないものも多く、複数デバイスでの正確なタイムスタンプ同期を実現するにはある程度のコネクタ数を備えた上位モデルを採用しなければなりません。一方、当社製品では、単体で使用した場合でも複数で使用した場合でも変わらず、分配器などの追加機器を必要とすることなくハードウェア同期を実現できます。これにより、小規模な構成から大規模な構成まで、柔軟にスケールさせることができ、構成変更があった場合にも既存機器が無駄になりません。

Sync線共有の方式比較: 分配器を用いた方式とデイジーチェーン方式

ゲートウェイPC(当社製 EDGEPLANT T1)へ接続した様子

自動車計測におけるタイムスタンプ同期の重要性とは?

自動車の内部では、エンジン、ブレーキ、ステアリングといった様々な制御システムが互いに連携して動作します。 これらのシステムの全体を検証・評価するには、それぞれがどのように相互作用しているかを厳密な時系列で追跡し、正確なタイミングを理解することが不可欠です。

しかし、各システムが異なるCANバスを通じて通信している状況で同期されていないデバイスによってデータを取得すると、 それぞれのバスから取得されたデータのタイムスタンプの同期が取れなくなってしまいます。 タイムスタンプが同期していないと、各システムがどのような時系列で連携しているのか正確に把握することができません。 例えば、ブレーキシステムの指令がエンジン制御へどのように影響を与えるか、または緊急時におけるステアリングとブレーキの協調動作が適切に動作しているかなどが評価できなくなってしまいます。

CANバスへのCANフレームの送出も可能

本製品は、CANバスからのCANフレームの取得だけでなく、CANフレームの送出にも対応しています。

例えば、セントラルゲートウェイにつながるCANバスに本製品を接続して、診断用のプロトコルに従ってCANフレームを送出することで診断通信を行うことも可能です。標準化された診断通信の規格に則ってフレームをやり取りすることで、DBCファイルをお持ちでない場合でも車両データを取得することができます。

また、CANバスへ予期しない影響を与えないように、本製品はデバイスドライバーから動作モードをListen Onlyに設定できるようになっています。Listen Onlyモードに設定することで、一切のCANフレームやACK信号を送出しなくなるため、安心してCANバスに接続していただけます。

公開されているファームウェアとデバイスドライバー

本製品のファームウェアおよびデバイスドライバーは上記の 当社Webサイトの製品ページ で公開していますので、それらと各種オープンソースツールを組み合わせることで、本製品単体でもご利用いただけます。 以下の記事では、オープンソースのCANドライバー SocketCAN と可視化ツールの SavvyCAN を使用して、本製品を利用する例をご紹介しています。

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一方、本製品は、冒頭でも触れました当社のクラウドサービス「intdash Automotive Pro」と組み合わせてご利用いただくことで、より効果的にご活用いただけます。 本記事の後半では、「intdash Automotive Pro」についてもう少し掘り下げてご紹介していきます。

本製品を含む自動車計測遠隔化ソリューション "Automotive Pro" とは

intdash Automotive Pro は、自動車計測ワークフローの自動化・遠隔化を実現するためのパッケージソリューションです。 これまでにご紹介した EDGEPLANT CAN-USB Interface は、実はもともと、本ソリューションの一部として開発されたデバイスになります。

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intdash Automotive Pro では、自動車から各種データを取得するための専用の車載装置、クラウドサーバー上に配置したデータの管理・可視化アプリケーションをセットで提供します。 専用車載装置はLTEによるインターネット接続を備えており、自動車から取得したデータを自動的にクラウドサーバーへアップロードします。 クラウドに集められたデータには、ブラウザベースの管理・可視化アプリケーションによって世界中からいつでもどこからでもアクセスが可能です。

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本ソリューションの目的は、自動車業界における車両計測ワークフローの改善です。 従来のデータロガーを使ったワークフローでは、車両に積んだ計測機器のデータを一旦ハードディスクなどに保存し、各計測地から回収していました。 データを回収した後も、ディスクからデータをコピーする、計測機器間のタイムスタンプを同期させるなど、データを解析に回すまでの後処理工程にも手間がかかります。

intdash Automotive Pro を利用することで、データはLTE回線を使用して随時自動的にクラウドへアップロードされ、リアルタイムに世界中の拠点で共有されます。 独自のタイムスタンプ管理機構も備えており、各機器のタイムスタンプがきちんと揃った状態でクラウドにデータが保存されるため、後処理工程の手間もなく直ぐに解析に取り掛かることができます。

Automotive Proの特長

  • CAN/CAN-FDに対応(同時取得4~8チャンネル)
  • カメラ映像の取得も可能(同時取得1~2ストリーム)
  • GNSSによる車両位置の取得
  • 取得データは即時クラウドに伝送され、遠隔地でリアルタイム可視化可能
  • LTE回線による取得データの自動アップロード
  • 自動データリカバリー機能で、LTE回線切断時もデータロストなし

Automotive Pro の構成

現在は、intdash Automotive Pro DAQ Bundle という名称で、ハードウェア、クラウドサーバー、Webアプリケーションすべてオールインワンなバンドルパッケージとして販売しています。

基本構成

本製品の基本的な構成は、以下の通りです。

  • 専用のゲートウェイコンピュータ(当社製 EDGEPLANT T1
  • USB/CANインターフェイス機器(当社製 EDGEPLANT CAN-USB Interface
  • 映像取得用USBカメラ(当社製 EDGEPLANT USB Camera
  • 当社が運用するクラウドサービス(データ伝送・データ管理機能を提供)
  • データ可視化アプリケーション・データ管理アプリケーション

CANデータの取得に対応した専用の車載装置を計測対象の自動車に搭載していただくことで、当社のクラウドサーバーと繋がった車載装置がLTE回線を使用して自動的に取得データをクラウドに格納していく仕組みです。車載装置からのデータ伝送には自動的なデータリカバリー機能が実装されているため、LTE回線の電波状況が悪く断続的に切断を繰り返すような不安定な環境でも、取得したデータをロストすることなく完全にクラウドに回収しきることが可能です。

拡張性・カスタマイズ性

intdash Automotive Pro DAQ Bundle の基本構成は前述したとおりですが、基本構成で満たせない要件がある場合は、本製品をベースとしたカスタマイズにより対応可能です。

例えば、CANバスへのデータ出力が可能な各種機器を利用することで、同期計測可能なデータの種類を拡張できます。CANバスへのデータ出力に対応した機器には、6軸センサー(加速度・ジャイロ)や高精度GPSなど色々なものがありますので、これらを利用することでCANと様々なデータを同時に計測可能です。

また、当社の別製品としてアナログ入出力を行うUSB機器(EDGEPLANT ANALOG-USB Interface)があり、こちらを使用することでアナログ信号とCANデータの同期計測を行うことも可能です。ANALOG-USB InterfaceCAN-USB Interface と同様のデイジーチェーン方式の同期機構を備えており、同じSync線によって接続が可能です。

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その他、カスタマイズ開発のためのSDKやAPIもご用意がありますので、要件に合わせて様々に拡張してご利用いただくことができます。

Automotive Pro でのデータ管理・可視化

intdash Automotive Pro のさらなる魅力付けのために、付属する可視化アプリケーション「Visual M2M Data Visualizer」を最後にご紹介いたします。

Visual M2M Data Visualizer は、intdash Automotive Pro に付属するデータ可視化用のWebアプリケーションです。 Webアプリケーションとして提供されるため、利用するPCへの追加ソフトウェアのインストールは一切必要なく、 ブラウザと認証情報さえあれば、世界中のどこからでも、どのPCからでもクラウド上のデータにアクセスすることができます。

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データの可視化では、可視化ウィジェットをマウス操作で組み合わせてダッシュボードを作成する、いわゆるノーコードツールとしてご利用いただけます。 データをテキストや数値で表示するだけでなく、ライングラフや散布図などのグラフ表現で直感的に可視化したり、数値データと合わせて映像や音声スペクトログラムを表示したり、 マルチモーダルな様々なデータを一つの画面で一括して表示することが可能になります。

また、ブラウザで使用するWebアプリケーションではありますが、 DBCファイルを用いたCANデータの物理値への変換処理はブラウザ上で行う仕組みとなっており、秘匿情報であるDBCファイルはクライアントPCから外に出ません。 クラウドサーバーに保存されるCANデータも物理値変換前のバイナリ値のままで格納されるため、サーバーを管理する当社からも物理値情報へアクセスすることはできない仕組みとなっています。

お手持ちの解析ツールや独自の解析手法との連携についてもご心配は無用です。 Visual M2M Data Visualizer で表示しているデータはCSVファイルとしてダウンロードすることが可能で、ファイルによってお手持ちの解析ツールに連携していただけます。 また、可視化ウィジェットの拡張用SDKも提供しておりますので、いちいち解析ツールに連携するのが手間であれば、解析手法をまるごと Visual M2M Data Visualizer に埋め込むことも可能です。 より高度な連携を実現するためのAPIの提供もありますので、カスタマイズによりより深く独自のワークフローに適合させること可能です。

可視化アプリケーションの特長

  • リアルタイムストリーム、蓄積された過去データ双方の可視化に対応
  • CANのような高頻度データ(秒間数千メッセージ)の可視化にも十分な性能
  • CANに加え、映像・音声データなど様々なマルチモーダルデータに対応
  • ライングラフ、映像再生、地図プロットを含む様々な可視化表現
  • DBCファイルによる物理値変換に対応
  • API・SDKによる可視化表現の拡張が可能

おわりに

本記事では、CANバスからのデータ取得用デバイス「EDGEPLANT CAN-USB Interface」のご紹介からはじめ、本製品を含んだ自動車計測の遠隔化ソリューション「intdash Automotive Pro」についてご紹介しました。intdash Automotive Pro では、LTE接続可能な専用の車載装置、クラウドサービス、可視化アプリケーションをオールインワンでご提供することで、人手がかかっていた自動車計測ワークフローを大幅に改善し、人的コストやリードタイムを削減します。自動車計測ワークフローの効率化やコスト削減をお考えの皆様、導入をご検討いただけますと幸いです。

すこしでも興味をお持ちいただけましたら、当社Webサイトのお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

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*1:CAN: Controller Area Network

*2:EDGEPLANT ANALOG-USB Interface

*3:ファームウェア・デバイスドライバー: 当社Webサイトの製品ページ より入手してください