aptpod Tech Blog

株式会社アプトポッドのテクノロジーブログです

宇宙通信と intdash

aptpod Advent Calendar 2022の19日目を担当します、ソリューションアーキテクトの渡辺です。

ところで皆さん。

海外旅行に行くために航空機を利用したことがありますか。
その航空機の中でインターネットが当たり前のように利用できます。
それは何故でしょう?

海外旅行に行くために豪華客船を利用したことがありますか。
その豪華客船の中でもインターネットが当たり前のように利用できます。
それは何故でしょう?

これらには「宇宙通信」という技術が用いられています。
この宇宙通信を intdash で試す機会がありましたので、宇宙通信の概要説明と共にその様子をレポートします。


宇宙通信とは

宇宙空間を飛行する機体は正式には「宇宙機」と呼ばれます。
人工衛星、探査機、宇宙ステーションこれらすべて宇宙機です。
この宇宙機が行う電波通信のことを宇宙通信と呼び、特に人工衛星に搭載した中継器を用いて地上の2地点間の通信を行うことを「衛星通信」と呼びます。

2種類の衛星通信

衛星通信では人工衛星を通信の中継器として用いますが、利用する衛星によって大きく2種類に分類できます。

静止衛星を利用する

身近なものとしては、BS放送があります。
地上から静止衛星に対してTV映像を送信し、それを受信した静止衛星はそのTV映像を地上の広い範囲に向けて送信します。
静止衛星は高度36,000Kmにあり、地表の広い範囲をカバーします。
また、地上から見ると上空の固定した位置に静止しているため、常に通信を行えます。

【静止衛星のカバー範囲】
静止衛星は1機で地上の30%~40%をカバーできることから、静止衛星を4機使うと理論的には全世界をカバーする通信網を構築することが出来ます。
この方式でTDRS (Tracking and Data Relay Satellite)がNASAにより運用されており、8機の静止衛星が稼働しています。
【静止衛星による全世界カバー】
静止衛星通信のメリット

  • 静止衛星には大出力の中継装置を搭載できるためブロードバンド通信が可能
  • 広範囲に同報配信が出来るため放送用途に向いている

静止衛星通信のデメリット

  • 衛星を赤道上空にしか配置できないため、北極・南極では利用出来ない
  • 地上からの送信に大出力が必要となるため地上の送信装置を小型化できない


低軌道衛星を利用する

近年、本格的に利用出来る様になってきました。
主に大型の航空機や、外航船舶で利用されています。
衛星の高度が静止衛星の36,000Kmに対して800Km前後とかなり低く地上に近いところを飛んでいるため、カバーできる通信範囲が狭いです。
また、地上に対して秒速7Km(音速の20倍)以上という極超音速で移動しているため、1機の衛星は10分足らずで上空を通り過ぎてしまいます。

【低軌道衛星のカバー範囲】
このような低軌道衛星と1対1ではまともな通信は行えないので、多数の衛星を打ち上げて、上空を衛星で一杯にしてしまおう、というのが低軌道衛星を利用する場合の考え方です。
移動中にスマートフォンで通話をしているような場合、一つの基地局のカバー範囲から次の基地局のカバー範囲に人が移動しても通話を続けることが出来ます。
これをローミングと言いますが、低軌道衛星を利用する場合は基地局の方が超高速で移動していて次々とローミングを行っている状態、という訳です。
スペースX社の「スターリンク」サービスは何と2,000機を超える小型衛星を打ち上げて運用しています。
【低軌道衛星による全世界カバー】
低軌道衛星通信のメリット

  • 地上の送受信装置を小型化できるため携帯電話としての利用も出来る
  • 極軌道衛星を用いれば北極・南極も含めて地球上全てのエリアで利用できる

低軌道衛星通信のデメリット

  • 低軌道衛星には大出力の中継装置を搭載出来ないため通信帯域が限られてしまう
  • 多数の衛星が必要で低軌道衛星は運用寿命も短いためコストが高い


intdash による宇宙通信

さて、話は変わって intdash による宇宙通信を行ってきた様子のレポートです。
冒頭で航空機で宇宙通信が利用されていることを書きましたが、今回の機会も将来、航空機で intdash を利用して頂くことを想定したものです。
そのためなんと当社製品「EDGEPLANT T1」を航空機に搭載して空に飛ばし、上空で宇宙通信(衛星通信)を行ってきました。

利用させて頂いたのは「イリジウム」という低軌道衛星を用いた衛星通信サービスです。

www.n-aviation.com

イリジウムは66機の低軌道衛星を運用しています。
このイリジウムが計画された当初は77個の衛星を用いる事になっていたため、原子番号77の元素であるイリジウムがサービスの名称になっています。
このイリジウムという名前にピンときた方はかなりの宇宙マニアですね。
1991年に計画された後
衛星に反射する強い太陽光がUFO騒ぎを起こしたり
人類史上初の人工衛星同士の衝突事故を起こしたり
で世を騒がしたあのイリジウムです。
一度は経営破綻して計画がとん挫しましたが、いつの間にか復活して当初計画していたサービスを見事に実現させていたのです。

この度、ナビコムアビエーション様のご協力で、同社が保有する小型飛行機にイリジウム地上局と「EDGEPLANT T1」を搭載して飛行試験を行って頂きました。

www.n-aviation.com

今回の飛行試験ではこの小型飛行機が飛びました。
ナビコムアビエーション様が所有している機体です。


二人乗りのシートの後ろに諸々の機材を搭載しました。
もちろん「EDGEPLANT T1」もここに搭載します。


そして無事に離陸。
周辺を飛行して地上をカメラで撮影し、撮影データをイリジウム回線で地上に送信する、というのが今回の飛行試験の目的です。
当社営業担当社員のK氏が撮影(カメラ持ち)係として搭乗し、2回飛行したのですが、とっても楽しかったらしいです(笑)



こんな感じで無事に宇宙通信を intdash で試すことが出来ました。
このような小型航空機(モーターグライダー)で宇宙通信ができる技術が既にあります。
近い未来「空飛ぶ車」などもっと小型な航空機に intdash が導入されたら、世界中の空を intdash が飛ぶ日も近い???