はじめに
Hardware/OTグループの加藤です。
私はハードウェア系のエンジニアで、これまでデータ計測にオシロスコープ・デジタルマルチメータ・データロガー等を使用したことがあります。
それぞれ一長一短なので組み合わせて使用することになるのですが、それぞれ別々の測定器である為、取得したデータは連携していませんでした。特にオシロスコープの波形には時刻の概念はなく、他の測定器のデータとタイムスタンプを合わせて検証することはできませんでした。
また、長時間連続稼働テストや遠隔地での長時間におよぶ動作テスト等ではネットワークカメラを使用しました。
自宅やオフィスで状態を確認できるようになるのは便利なのですが、
エラーや故障が起きてしまった場合にはどういう状況でそうなったかはさっぱりわからず遠い場所で途方に暮れるしかありませんでした。
製品そのものに通信機能が無い場合が最悪で、常に見張る必要がありました。
製品か自分か動作が止まってしまう(寝てしまう)のはどちらが先かみたいな状況になりがちでした。
intdash、 EDGEPLANT T1を使用すると、LTE回線で各種データを同じ時系列上のタイムスタンプを付加して記録することができます。 今回、ANALOG-USB Interfaceという製品を約1年かけて設計→開発→量産に至り、アナログデータも測定できるようになりました。 これら弊社の製品を組み合わせると、LTE回線経由の遠隔アナログデータ計測や、計測したデータの可視化が行えるようになり、冒頭の課題が全て解決します。 本記事では、ANALOG-USB Interfaceを使用したアナログデータ計測のメリットとこれを試した結果を共有します。
aptpodの遠隔アナログデータ計測
以下の特徴・メリットがあります。
特徴
- アナログ信号をデジタル(16bit)に変換して保存します。
- 測定対象に合わせたサンプリングレートを設定できます。
- カメラ画像とセットで記録できます。
- 先日のブログでご紹介させていただいたようなCANのデータとも同じ時系列上のデータとして記録できます。
- 測定データ・画像は、測定中直ちにクラウドに保存されます。
- LTE回線を使用できます。
- トンネル内等、電波が届かないエリアを通過しても測定データは失われません。
メリット
- 情報共有がスムーズ
任意のタイミング、場所から確認できます。ブラウザが動作すれば、弊社が提供するソフトウェア Visual M2M Data Visualizerを使ってパソコンで確認できます。 - 直感的に理解できる
Visual M2M Data Visualizerを使うとアナログ信号を波形で確認することができます。 - 解析できる
カメラ画像とセットでアナログ信号を記録できます。画像から、アナログ信号波形を見たいタイミングを探すことができます。 トリガーを設定して検索することもできます。連続運転テストやデバッグに便利です。 - 机の上で使える
エッジコンピューターも測定用デバイスもコンパクトサイズです。机の上で使用することも持ち運びすることも可能です。 - 移動する物の測定にも使用できる
LTE回線でデータを送信することが可能な為、自動車やAGV、その他移動ロボット内部の信号を測定することも可能です。
測定の内容
測定のイメージをつかんでいただく為に実際に測定を行います。
aptpodは自動車などの車両関係のお客様の実績が多いのですが、
今回のテックブログを書くにあたってはより幅広い業種の方々に興味をもっていただきたいと考えたこと、在宅勤務が一般化したことなどから、家庭にあり身近なもので、普段の生活では可視化されていないものを測定したいと考えました。
結果、洗濯機を測定することにしました。家庭内で毎日激しく動いている物だからです。
洗い・すすぎ・脱水と3種類の動作モードがありますので、各動作モード時の振動の計測を行います。
アナログ信号が出力可能な3軸加速度センサを洗濯機の上に貼り付け、このセンサの出力信号を測定します。
センサの出力信号は、冒頭ご紹介させていただいたEDGEPLANT ANALOG-USB Interfaceに接続します。
また、洗濯機の表示器をUSBカメラで録画します。洗濯機の表示を記録することで、アナログ信号がどの動作モードの時のものなのか分かるようになります。
ANALOG-USB InterfaceとUSBカメラは、エッジコンピュータに接続します。エッジコンピュータには、EDGEPLANT T1を使用します。弊社が提供するミドルウェアintdash Edgeを組み込みます。
エッジコンピュータの電源をONにするだけで、測定は開始されます。
ただし、測定対象の設定をあらかじめ行う必要があります。
今回の測定では、アナログ信号の測定レンジは0-5V、サンプリング周波数は625Hzに、カメラ画像の解像度は640x480、フレームレートは秒間15フレームに設定しました。
測定データの確認方法
測定データは、弊社が提供するソフトウェア Visual M2M Data Visualizerで確認します。
このソフトウェアはWebブラウザを使用して測定データを確認できるツールです。信号波形、電圧値、カメラ画像など各表示はパーツ化されていて自由に配置できます。信号波形の表示パーツはANALOG-USB Interfaceの為に新規開発したものです。今回の測定では上記のような画面イメージで、アナログ信号波形、電圧、カメラ画像を確認しました。
各電圧波形の色と内容の対応は下記のとおりです。
- 青(ch0)=奥行き方向の加速度
- 赤(ch1)=左右方向の加速度
- 緑(ch2)=上下方向の加速度
使用したセンサーの感度は、660mV/gです。緑(ch2)は常に重力加速度が加わる為、静止時の電位が高くなっています。
洗濯の流れ
洗濯は標準コースで行いました。洗い→すすぎ→脱水の順に処理が行われました。
Visual M2M Data Visualizerは、測定全体を表示する機能もあります。
下記の様に処理が行われたことをカメラ画像を見て確認しました。また、全体の処理はおよそ33分でした。
洗い
各動作モードにおける加速度センサの出力の詳細を見ていきましょう。
「洗い」の特徴は単純な波形が長時間続くことです。
最初に洗濯する衣類の量の測定、洗剤の投入、注水がありますが、ドラムの回転が始まると規則的な挙動の繰り返しになります。
およそ1秒おきに左右方向と上下方向の振動が発生します。ドラムが回転し衣類が動く周期が現れているものと考えられます。
他の動作モードと比較して振動は小さいです。
「洗い」時の代表的な波形は以下のとおりでした。
すすぎ
「すすぎ」は前半と後半で動作が違います。前半は多くの水を使い、すすぎを行います。後半は、排水を行います。
すすぎは、上下方向の振動が他よりも大きいのが他の動作と違います。音が大きく出ませんし、見た目に大きく揺れているようには見えないので意外でした。
「すすぎ」時の代表的な波形は以下のとおりでした。
脱水
「脱水」動作も2段階で構成されています。最初に小さい振動による動作を行った後、大きい振動動作になります。
時間的には、殆どが大きい振動動作になっています。脱水は3軸とも波形が大きく振れるのが特徴です。
「脱水」時の代表的な波形は以下のとおりでした。
結果
動作全体のフローをつかんで、洗い・すすぎ・脱水時の加速度センサ出力信号波形を確認することができました。
「ANALOG-USB Interface」と「EDGEPLANT T1」を組み合わせた遠隔のアナログデータ計測や、「Visual M2M Data Visualizer」による計測した結果の可視化が行えることが、ご理解いただけたのではないかと思います。
測定時のデータはcsv形式でダウンロード可能です。お客様がご使用になられる測定では、測定データのアナログ信号のフィルター処理や解析を行えます。
今回は洗濯機の振動を加速度センサで測定しましたが、アナログ信号であればセンサ以外についても測定可能です。
例えば、刻々と変化するカメラ画像を入力とするシステムや製品が出力する信号を測定すること等もできます。画像も信号も同じ時系列上のタイムスタンプが割り振られますので、どういった入力状態で何を出力したか検証できます。それらの開発やテスト等にもご利用いただけるのではないかと考えております。
加えて、CAN-USB Interfaceも併用すればCANの信号も測定できますので、自動車の様に複雑なもので統合的な計測を行う事も可能となっております。
最後に
次回私が担当させていただく記事では、自動車でCANとアナログ信号の時刻同期を行った測定を行いたいと思います。
今回の測定で使用した弊社の製品・サービスのリンクを以下に記載いたします。
もし、ご興味を持たれましたらお問い合わせまでご連絡ください。