aptpod Tech Blog

株式会社アプトポッドのテクノロジーブログです

海上でのStarlinkを用いた遠隔計測について

はじめに

aptpod Advent Calendar 2024 12月23日の記事です。
ソリューション開発&パートナー支援グループの村松です。弊社では、遠隔計測、操縦の支援を行っております。
通常は、携帯電話網を利用した案件が多いのですが、アンテナが設置されていない場所での計測のご依頼もございます。
弊社独自の通信プロトコル(iSCP)には、一時的な通信途絶時に収集データをエッジ搭載のSSDに格納し、通信再開後に途絶時のデータを通信の空き容量で再送する機能が搭載されています。 洋上やOEMが保有する山あいのテストコースなど、計測地のネットワークが存在しない場所では、リアルタイムでのモニタや遠隔操作はもちろん、SSDの容量が、計測時間の制限となります。 今回は、昨年2023年7月からサービス提供を開始してる洋上インターネットサービス「Starlink MARITIME」を用いた計測をご紹介します。

Starlinkとは

Starlinkは、アメリカの航空宇宙企業スペースXの完全子会社であるスターリンクサービスLLCが運営する衛星インターネットコンステレーションです。コンステレーション(constellation 星座)とは、多数の人工衛星の一群・システムを指し、個々の衛星は他の衛星と連携しネットワークシステムを構築しています。 スターリンクの衛星群は、地球低軌道(LEO: low Earth orbit 地表より2000km以下の軌道)上に展開され、2024年12月時点で5600機を超える小型衛星で構成されています。

STARLINKMAP.ORG - Real-Time Starlink Satellite Tracker

衛星軌道

小型化・量産化により製造と打ち上げのコスト削減を実現した人工衛星を経由して、利用者が所有する専用の無線通信端末キットと各国に設置された地上ステーションを結び、ユーザーの居住地の地上インフラによらない、低価格の衛星インターネットアクセスサービスを提供しています。実際にサービスが提供されるのはスペースXがサービス提供のライセンスを取得した国に限られ、2024年現在91カ国でサービスを提供されています。
日本では、2022年10月11日 アジア初として東日本の一部地域のみ対応エリアとしサービスが開始され、2022年12月に日本全国で利用可能となりました。

2023年7月3日から、衛星ブロードバンドサービス「Starlink」について、領海内の海上利用向けにサービス提供を開始され、日本領海内航海中にダウンロード速度最大220Mbps(ベストエフォート)の通信環境が可能になりました。
Starlinkを海上利用向けに提供開始 | KDDI News Room

本題

Starlinkを用いた2024年10月16日から18日の3日間の海上通信速度に焦点を絞ってお話を進めたいと思います。

計測項目: 

端末1
既設船外カメラ映像H.2641920x1080 15fps
機関インジケータ画面H.2641920x1080 15fps
船外音声PCM16bit
GPSNMEA1Hz
端末2
船橋操船カメラ映像H.2641920x1080 15fps
電子海図表示画面H.2641920x1080 15fps
船橋音声PCM16bit
GPSNMEA1Hz

2台の端末(edgeplant T1)を有線ルータを介し、Starlinkと接続しリアルタイム計測を行いました。

構成図

edge状態をリモートから確認できるように、edgeよりクラウドへ約1Hz周期で、CPU利用率(top),ディスク利用率(df),ネットワーク利用率(netstat)などの情報をクラウドに上げております。 通常のLTE通信によるデータ収集では、RSSIやedgeが掴んでいる通信バンドの確認など、通信障害時に有用な情報がリモート側のVM2M上に表示可能となっております。 今回は、ネットワーク利用率とくに、2台のedgeからクラウドへの上りの速度(wlan0.tx.bps)を用いてアップリンクの通信速度を集計してみました。

2024年10月16日 19:00 (勝浦沖25Km 35°10'55.1"N 140°41'25.2"E) から
2024年10月18日 00:00 (銚子沖90Km 35°38'27.5"N 142°02'56.0"E) まで、

  • データ点数: 36937データポイント
  • 最大値: 51.46Mbps
  • 平均値: 11.27Mbps
  • 中央値: 11.68Mbps

ヒストグラム

今回の海洋計測では、2台のEdge端末のTx合計より、おおむね上り11Mbpsでデータ回収ができていたようです。平均を下回るケースも5375回見うけられ、計測ポイントで14%が10Mbps以下の低速通信となっていました。その反面、20Mbpsを越える通信速度も1.3%、最大速度51.46Mbpsを確認できました。日本国内での契約増加が見込めれば、日本上空を通過する衛星数が増加し、通信速度の改善も期待できるかと考えております。