aptpod Tech Blog

株式会社アプトポッドのテクノロジーブログです

さようなら電機メーカー、こんにちはスタートアップ

f:id:apt-k-ueno:20200107183943p:plain aptpod Advent Calendar 2019の23日目を担当するハードウェアGpのおおひらです。

いきなりアレな感じのタイトルでなんだか申し訳ないのですが、株式会社アプトポッド(以下aptpod)に入社してちょうど1年になることもあり、このタイミングでしか書けないだろうなぁということで書きました。 (本当はイケてるFPGA高位合成の記事へのRTLおじさんからのアンサーとして TclスクリプトではじめるFPGAのバージョン管理 なる記事を投下しようと思っていたんですが、これはまたの機会に…)

はじめに

  • 本稿を読むのにかかる時間は約8分です
  • あくまで一個人としてのポエムです
  • Japanese Traditional Big Company (JTBC) などと言って日本の大企業を揶揄する風潮がありますが、本記事はそのような類のものではありません
  • 令和元年12月23日(月)は平日😇ということで、ちょっと気落ちした心をリフレッシュできるよう前向きな文体を心がけます

自己紹介

  • 2011年4月、電気設計エンジニアとして東日本大震災でてんやわんやしていた電機メーカーに入社
  • B2Bをやりたい(むしろB2Cは興味ない)、という奇特さを買われて業務用映像機器の設計部門に配属
  • 画質評価やちょっとした小基板・FPGA・組込ソフト設計を3年ほど
  • 映像処理基板・中規模のFPGA設計を2年ほど
  • Windowsアプリのプロマネを1年ほど
  • 商品設計 / 電気設計 / FPGA設計の各署リーダーを2年ほど
  • 2019年1月から現職

転職に至る経緯

  • リーマンショック後のリストラ期に電機メーカーに入社したため痛みを伴う改革を多く目の当たりにした
  • 切るほうも切られるほうも、どっちもツライ、けど儲かってないからどうしようもない
  • 利益を出せないことの惨めさや、企業というものの効率追求システムの原則が身にしみた

そんなこんなで醸成された価値観に加えて、

  • 業務用機器という、安定したB2B市場の中で技術者としてチャレンジする機会が減っていった(とくに自分がマネジメントする立場に近づくにつれて、自分も当然のごとく安全策をとるようになった と自覚していた)
  • 技術的におもしろい部品や新しい仕組み・ツールの情報を得ても、なかなか活用する機会が作れない
  • なんとか根回しして新しいことを始めようとしても、本流の既存事業の重要な案件が飛び込んでくる(しゃあない)

「あの計画してくれた案の試作費、やっぱりバジェットに入れられなかったわ…すまん!」

「そうですか😇まぁしょうがないですよね😇またどこか良きタイミングで提案します😇」

ということもあったりで、やっぱり技術者は成長市場で勝負せねばいかんのか…とおぼろげながら感じていました。

また、勤めていたメーカーは比較的若手への権限移譲が進んだ組織でしたが、それでも私が所属していた部署は

  • 課長は早くて35歳ぐらいから。しかし優秀な30,40代の人がゴロゴロいて椅子取りゲームの様相
  • 部長は45歳ぐらいから。そもそも事業が儲かってないとポジションがあるかどうか…(黒字部門からの落下傘もある
  • 部門長までいけるか、なんて完全に運 (個人が優秀かどうかなんて瑣末なこと

という現実もあり、仮に運良くマネジメント職につけたとして、自分のやりたいことと組織の方向性をすり合わせる影響力を行使できる(かもしれない)のは50歳代…20年先か🤔… ということで大きな組織に勤めるリスクをひしひしと感じていたのでした。

こんな背景から、2017年ごろから転職を見据えていくつかの会社に話を伺いに行っていたりしたのですが、2018年の夏に現職の人事の方に声を掛けて頂いてaptpodを知る機会があり、B2Bをやりたい私の志向と会社の向いている方向が合っていると感じたうえに、ハードウェア設計を含めて垂直統合でソリューションを提供するという、なかなか類を見ない(=難易度の高い)事業に挑戦する姿勢に魅力を感じて入社を決めた次第です。

aptpodに入社して

組織のこと

意思決定の速さ

経営陣までの階層が2つぐらいしかないですから当然のごとく速いです。メーカー換算すると、ちょっとデスクに行って部課長をつかまえて議論して、製品の方向性を決めて試作Go、ぐらいの体感速度。大変にストレスフリーです。

質実剛健さ

本稿のタイトルにこんにちはスタートアップとありますが、ごめんなさい、盛りました。

aptpodは2006年創業で、スタートアップというよりはベンチャーと呼んだほうがしっくりくる組織だと感じます。スタートアップ キラキラ などと検索すると下記みたいな記事が出てきますが…

thestartup.jp

弊社はそれよりも、目の前のお客さまに実体のある価値を届けることを重要とする空気を感じます。これはメーカーも似ているかも。ユーザーファーストの質実剛健さはとても大事で好きなところです。

異なる経験を持つメンバーがお互いを尊敬し合う雰囲気

メーカーにおられる方は分かって頂けると思いますが「XX屋を説得してこい!」「これだからXX屋さんは話が通じねぇ!」みたいな部署間の折衝、ありますよね。あるいは「君さ、これやっといて」みたいな、年齢や立場を使った上から下への謎のタスクぶん投げ。That's ディスコミュニケーション。

現職は垂直統合型の組織でそれぞれのメンバーのバックグラウンドや技術領域が多種多様なこともあり、お互いの違いを尊重して丁寧なコミュニケーションを取ってくれる方が多いと感じています (ちなみに私が入社して一番初めに書いた社内ブログは半導体の解説記事でした)

お互いの持つ技術領域が大きく異なるがために、理解し合おうとする空気感は本当にありがたいものだと感じます。

メンバーの能力の高さ

NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く

NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く

仕事の満足度は、グルメサラダや寝袋やテーブルサッカーの台とは何の関係もない。仕事に対する真のゆるぎない満足感は、優れた同僚たちと真剣に問題解決にとりくむときや、懸命に生み出した製品・サービスを顧客が気に入ってくれたときにこそ得られる。

書籍の内容は賛否あれど、1万回ぐらい噛み締めたい言葉ですね。転職してよかったと思いますし、チームとして結果を出していきたいと思います。

働く環境のこと

Slackコミュニケーションで快適

言わずもがなのため割愛。

G-SuiteやOffice 365やSmartHRやMFクラウドが

同上。割愛。

Gitが普通に使えて最高

メーカーで古参のHWエンジニアだとSubversionでも手取り足取り教えてもできない人は多いんですよね。そういうリテラシーが普通にあるということに感動しました (基準がおかしいとか言わないで…

家族を大切にし、それを公言できる雰囲気

前職だと40代、50代ですでに子育てを一段落した男性がマジョリティということもあり、どうしても仕事優先という空気感が出ることが多いのです。社内の食堂で晩御飯を食べて、さぁもうひと頑張りするぞ!みたいな。

aptpodに入社してからは小さいお子さんがいるメンバーが多く、家族を優先して当然という空気感が大変ありがたいです。Slackで「子どもが熱を出したので早退します」に対して【お大事に】のスタンプが付く速さよ😂 入社して数ヶ月経った頃、当初反対(そりゃそうだ)していた妻が転職してよかったねと言ってくれたことが印象に残っています。

真の裁量労働

メンバーを信頼して任せてくれる大人の雰囲気。前職でも最後の数年は裁量労働していたはずなんですが…なぜなんでしょうかね…。

私はとくに仕事とプライベートの区切りが曖昧でワークアズライフを地で行く人間のため、早くに帰宅して子どもを寝かしつけてから仕事を再開したり、お風呂に入りながらスマホで新製品の部品データシートを読んだり、自分の隙間時間を効率よく活用できて自由になったと感じます。

バックオフィスの手厚いサポート

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いつもありがとうございます!!!

おまけ
  • コーヒー飲み放題
  • お菓子も食べ放題 (太る
  • 社内自動販売機は一律30円
  • 関東IT健保ええやん
  • 社内サークルたくさん
  • オフィスは四谷三丁目、気分転換に新宿御苑へGo

めっちゃ褒めてるけどホンマかいなと思ったあなたへ

当然ながら上に書いたことはすべて、捉えようによってはネガティブにもなり得ます。

自由と責任は表裏一体 ということ 。

ハードウェア(電気)設計者として、移籍して思ったこと

ここからは少し業務に関連して、実際にハードウェア設計をする立場として感じたことを。

協力会社・商社の皆様が優しい件

「量産の数が出ないんだから大変だろうな…メールしても返事がないとか、『ごめんなさい売れません』とかは覚悟しておこう」と思っていたんですが、ありがたいことに意外となんとかなるものだなというのが正直なところです。打合せのたびに年間xxx個なんですが…大変申し訳ありません…という気持ちで臨むのですが、皆様とても優しくサポートしてくださり大変感謝しております🙇‍♂️ でもたまにはDigi-Keyで買います

調達コストはやっぱり大変

メーカー時代には10円で調達できた部品が簡単に100円以上に化けます。そりゃ当然だわという感じなんですが、いざ部品表から材料費をはじき出してみるとゾッとします。メーカーとガチンコ勝負したら絶対勝てない。あと市場で逼迫している部品は当然ながら手に入りません (特定スペックのMLCCとか)

設計だけが仕事じゃないんやで問題

メーカー時代には当然のごとく社内のプロの方々に協力してもらえた業務が自力になります。これも覚悟していましたが、やはり大きな組織は強い。長年蓄えられた圧倒的な資産が輝いてみえます。小規模組織 (現状、弊社ハードウェアGp 4名) に於いては製造に近い部分で協力会社の皆様にお力をお借りするのですが、それでもなかなか下記すべてに手が回らないのが正直なところで、昔は恵まれた環境にいたのだなと思い返すことも多くあります。

  • 製品の市場調査・企画・投資回収計画の立案
  • 信頼性試験
  • 安全規格・EMC認証などの各種法規対応
  • 部材調達 (見積依頼・発注・在庫管理・EMSへの部品支給・ディスコン対応)
  • 量産工程の改善・QC

ハードウェア製品の性質の宣伝

ソフトウェアのバックグラウンドを持つメンバーに説明する必要と責任があります。いまから試作に取り掛かって、デモは半年後、出荷は1年後ですと勇気を持って宣言しましょう。このあたりはメーカーで鍛えられた政治手腕が(

おわりに

弊社ハードウェアGpは2020年1月15日から東京ビッグサイトで開催されるオートモーティブワールドにむけて、試作品のデモ展示のために鋭意設計中です。ここ半年ほど取り組んできた映像関連のハードウェア製品開発の一端をお見せできるかと思いますので、車載計測にお悩みの方をはじめ、移動体全般のデータ計測・可視化・活用にご興味がある方はぜひブースにお立ち寄りください。

またハードウェアエンジニアに限らず全組織で絶賛メンバー募集中ですので、aptpodの採用ページに足を運んで頂けるとありがたく思います。

明日12/24(火)の記事は、弊社エンベデッドチームリードの@ffmatsuさんによるラズパイとCAN計測の質実剛健な(本人いわくチャラい)記事です!