はじめに
ハードウェアグループのおおひらです。
所謂コロナ禍と呼ばれる状況になってはや半年が過ぎましたが、ハードウェア設計に携わっている皆様はいかがお過ごしでしょうか。
弊社では今年の2月中旬から原則リモートワークの勤務態勢になり、緊急事態宣言が終了したあともオフィスの出社人数を制限するよう3密を回避する対策が続けられています。ハードウェアグループのメンバーも自宅と会社での作業のバランスをとりつつ業務にあたっています。
私自身、各種計測器や試作基板を自宅に持ち帰ったり、前々から個人で購入しようとしていた機材を揃えたりして自宅の作業環境を充実させております。最近では協力会社や商社の方々との打合せがWeb会議で行われることも多く、意図的に自室の作業デスクがカメラに写り込むようにして会話ネタの提供に一役買ったり…😊
さて、与太話はこれぐらいにして、本記事ではハードウェア製品を商品化するうえで地味で大変だけれど避けては通れない、部品表の管理について書きたいと思います。
部品表の管理は大変という話
部品表 : BOM (Bills of Materials) という言葉は、製造業に従事されている方には馴染み深いと思います。ハードウェア製品を構成する部品の一覧のことで、各部品の属性として例えば下記のようなものが挙げられます。
- 品名
- 各部品の部品番号 (型番/型式)
- メーカー名
- メーカー型番
- リファレンス番号
- 単価
- 数量 (員数)
- 環境規制情報 (RoHS)
- 図面の情報・リンク etc...
この部品表を元に調達・発注作業をしたり、また、各種製品コンプライアンスを遵守するために部品変更に対するプロセスを定めて情報追跡を行ったりします。
例えば米国仕向けのためにFCCの認証を取ったり、欧州仕向けのためにCEマーキングの自己宣言をしたり、更には車載機器としての欧州認証であるECE Regulation No.10 (通称Eマーク)の認証を取ったりと、各国と地域で適切な法規制を遵守する必要がありますよね。(弊社でも絶賛試験中です)
製品の出荷時点でこのような認証を受けることができたとしても、その後の部品の生産中止や仕様変更によって製品のスペックや構成物質が変わってしまうことは避けられません。こういった品質と製品コンプライアンスの管理・対応のために多くのメーカーでは4M変更プロセスが定められており、その活動の軸になる重要な要素が部品表と言えます。
品質管理における「4M」とは?効果を発揮するための変更管理 | デジタルトランスフォーメーション チャンネル
実際に特定の製品の部品表を作成する際には、そのフォーマットとしてスプレッドシート (エクセル)を使われる方が多いのではないかと思います。電気部品や半導体部品を実装した基板だけの製品を出荷するのであれば回路CADと統合されている専用のBOM管理ツールを使うことも考えられるのですが、多くの製品はメカ部品や副資材、シールや梱包箱、取扱説明書(紙)など、様々なマテリアルから成る部品の階層構造を持ちますので汎用的なフォーマットで作業できたほうが望ましいですよね。 しかしこれには色々と問題があって、
- 階層構造を作りづらい
- バージョン管理できない
- 横展開が面倒 (ある製品の一部品を、他の製品で流用しようとしたときに頑張ってコピペする)
などなど、手作業および謎のエクセルマクロを含み、誰も管理できない秘伝のタレみたいなファイルが出来上がる…という未来が容易に想像できます。
前職で謎の社内イントラシステムに苦しめられた経験もあり(←製造業の方なら同意してくれる人も多いはず)、スプレッドシートで管理したくないな…と思っていろいろ調べた結果、OpenBOMというクラウドベースの部品表管理サービスに行き着きました。
OpenBOMの紹介
ぱっと見て良い感じですね。
できること
上記のページにも書かれていますが、特徴は以下のとおりです。
- スプレッドシートのように直感的に作業できる
- 画像や3D CAD(Autodesk, Solidworks)のデータを取り込んで各部品をビジュアルで見ることができる
- 複数人で同時にBOM編集できる
- ERPシステム(Netsuite)などとの統合
- リビジョン管理できる
- 在庫管理できる
クラウドサービスとしての基本的な機能はもちろん、在庫管理や経費との連携もできるということです。
ライセンス形態
個人ユーザーであれば無償、もしくは月25ドルのプロフェッショナルユーザーのライセンスがあります。違いは階層ごとのコスト計算機能の有無や、ベンダー管理機能の有無といったところでしょうか。 チームであれば月125ドルから。
企業ライセンスは月375ドルで、部品番号を割り振ったり、4M変更に対応しようとするとこのライセンス契約が妥当かなと思います。
使ってみた
企業ライセンスで14日間の無償トライアルをしてみました。 基本的にはカタログを作成して、そのカタログをもとに各製品単位のBOMを作っていく仕組みになっています。カタログというのは、例えば電気部品だったり、半導体部品だったり、または機構部品(板金)、機構部品(ネジ)といった区分の単位で整理される部品のリストのことです。これをベースに各製品のBOMを組立てていくことで、各部品の再利用がしやすくなります。
個人的にGood!と感じたところは以下のとおりです。
- 電気CAD等、外部のCADの部品表からインポート可能
- 企業ライセンスだと各部品に自動的にユニークな部品番号を振ってくれる機能がある
- 部品が画像として可視化されていて直感的
- 部品の属性としてベンダーを紐付けられ、購買・発注時に複数のベンダーを比較することができる
- BOMの階層ごとにコスト算出できる
- 在庫管理ができ、試作支給部品や量産部品の管理が楽。営業・管理側と開発側との連携のハードルが下がる。
月375ドルでこれであれば使いたい…ということでこれから稟議申請書を書こうと思います。
おわりに
クラウドベースのBOM管理ツール:OpenBOMを紹介させていただきました。
弊社のように小規模な組織では専任の調達/購買メンバーがいないこともあると思います。我々エンジニアとしては、OpenBOMのようなツールを効果的に使って業務効率化を進めていけると本来やりたい開発・設計業務に集中できて幸せになれるのではないでしょうか。
※ ちなみに無償トライアルに申し込むとCEOのOlegさんから営業メールがバンバン飛んできます^^; 営業熱心でスゴイ。。。