aptpod Tech Blog

株式会社アプトポッドのテクノロジーブログです

ハードウェアエンジニアのリモートワーク 環境

EDGEPLANTグループの平野です。2021年4月にハードウェアエンジニアとして入社しました。 ハードウェアエンジニアは、お客様の要望を具体的に聞き、どう実現するのかを考えます。 必要な機能・費用・工数を算出して、部品の選定、製造の各工程、守らないといけない規格、製品の完成形などをふまえて提案・設計・製作などを担当します。 入社して1年半ほど経ちますが、今回、Tech Blogに何を紹介できるかかなり悩みました。 グループに相談したところ、同僚の野本さんに「仕事柄、色々な大きい機器を使っているイメージですが、リモートではどうしてるんですか?」と聞かれました。

確かに、仕事では色々な機器を使いますし、会社にはEDGEPLANTグループの様々な機器を置いている"島"もあります。 そこで今回は、ハードウェアエンジニアのリモートワーク環境について、私の例をご紹介します。

日々使う機器

さて、ハードウェアエンジニアの仕事で必要不可欠な機器は四つあります。

  • オシロスコープ(略称オシロ):製品の機能や様々な現象・疑問がある時、様々な信号の波形・タイミング等の確認につかいます。年中必要です。

  • マルチメーター:基本大きな電源は要らず、どんな場所でも部品・信号を簡易に確認できて、既に所持しています。

  • 安定化電源:不確定な要素(ノイズ)を排除して、幅広い電流と電圧を供給できます。回路の評価・デバッグに役に立ちます。

  • 半田ごて:基板の配線・修理等に使います。

    作業場の風景

コロナ禍で入社してすぐ、リモートワーク用にそれらのすべての機器の支給を提案されました。 そこで、私は半田ごて1式だけ購入させて頂きました。 実は、他の機器は、前職の会社が会社をたたむことになって自分も辞めることになったとき、 ほぼ自分一人が使用していた機器類を譲ってもらったものを愛用しています。 その中に、特にオシロは2・3回修理しまして、愛着があります。20年前の測定器ですが性能は十分現役です。

他に、一人に使うには“贅沢”とも言える電流プローブと信号発生装置を所持しています。 電流プローブは基板のデバッグ、ノイズの解析等、電流の波形には情報豊富で大変役に立ちます。 信号発生装置は今の所出番が少ないですが、アナログ信号関連で使用しています。

リモートワークのために自宅に用意している機器は以上です。 会社には、ここまで紹介したような機器はもちろん、大掛かりな恒温槽、スペアナ等があります。特殊な測定器が必要な場合、レンタルして会社に設置することもあります。 製品の正式な評価では会社の機器やレンタル機器を使うために出社する必要がありますが、検証・デバッグは自宅の機器で行えるので、普段のほとんどはリモートで仕事ができています。

小物類

ここまでご覧になって、皆さん意外に多いと思うのではないでしょうか。 ところが機器が多いだけでは収まりません。 このほかに評価ボード・道具・部品のサンプルというような小物がかなりあるのです。

評価ボードは新しいプロジェクトを始める度に増えてしまいます。 道具は電化製品の修理という趣味もあって、基本衝動買いです。 抵抗・コンデンサ・ダイオード・変換小基板・ケーブル・ネジ類等々は備蓄しています。 自宅にあるサンプル品は測定器と同様にデバッグ・評価機のみに使います。 正式な製品には会社で管理している部品のみ使います。

部品サンプルのごく一部

リモートで多分一番大変な業務はこれら小物の整理・管理でしょう。でも、豊富な小物がすぐに使える状態になっていてこそ、リモートでハードウェアエンジニアの業務を出来ているんだと思います。

終わりに

元々持っている物も多かったけど、アプトポッドはリモートワークにあたって必要な物品の支給を提案してくれました。 よって、よく使う機器や小物は全て自宅にあるので、問題なくリモートワークできています。 以上、長々と自分のリモート環境について述べてしまいました。 でも、お時間がある時、こちらのおまけ(パパエンジニアの週末)も読んで頂ければ嬉しいです。 最後までご覧くださいまして、ありがとうございました。

パパエンジニアの週末(おまけ)

 ある週末、長男がいきなり仕事部屋に入りました。

長男:パパ!今日基板できる?

私:何の基板?

長男:プラレールの基板、自動のやつ。

私:自動ってどんな風に?もっと具体的に説明してみて?

長男:電車は衝突しないように、あと、タブレットで操作したい。

私:タブレット操作は難しいな。まず、衝突しないようにすることに絞ってみようか。

長男:横にぶつからない為には緊急停止、前に電車がある時はブレーキ、減速する…

私:そうだね、電車を止めるのもブレーキをかけるのも、スピードを調整する必要があるね。それで、どうやって前に電車があるのを判断するの?

長男:前に使った音波センサーがある。使えない?

私:超音波センサー?良いかも。前に使ったのは電車にのせるには少し大きいから、もっと小さいものか、別の種類のセンサーを探しておくね。

長男:分かった。あとはいろんな電車に取り付けたい。

私:分かった。なるべく小さい基板にまとめれば他の電車にも使えるね。一応、今までの目的をノートに書いておいて。

長男:こんな感じ

  • 目的1:スピードを調整する。
  • 目的2:遠隔操作をする。無線で操作をする。
  • 目的3:センサーで止まるようにする。
  • 目的4:色々な電車にとりつける。

私:いいね。じゃ、今日は目的1をやってみようか。これはプラレールに入っているモーターと同じです。電池を接続するとこう回る。スピードを上げたい時、どうやる?

長男:パワーを上げる、電池を増やす!

私:学校で勉強したと思うけど、電池はどうやって接続する?並列?直列?接続してみて。

長男:直列!並列は電池を長く使いたい時!

私:大正解!直列に電池を増やせばモーターがより速く回せるの。でも、今回はスピードを上げるのではなく、電車を遅くしたり、止めたりしたいんだよね。どんな方法があると思う?

長男:電気切れば止まるけど、スイッチ?

私:そう!スイッチ。電車のスピードを調整するには、素早くON/OFFを切り替えれば いいの。先のモーターと電池の間、自分でスイッチをON/OFFして、動かしてみて。

…PWM制御をしばらく説明して…

私:どう?さすがに手で調整するには限界があるよね。私達は手で1秒間10回ON/OFF出来ないでしょう?そこで、手動スイッチの代わりに電気的なスイッチを使うための回路を作ります。

私:まず、モーターを動かすにはモーターに必要な大きい電流をON/OFFできるスイッチの代わりの「トランジスター」という部品(コレクター-エミッタ)を置くね。そして、こちら側(ベース)に小さなON/OFF出す機器を入れる。私達の手の代わりになる。信号発生措置、英語で“Signal Generator”、”SG“と書いてある。

私:さっきの電池、モーターとあわせてこんな回路になる。そして今回、モーターが止まったときに高い電圧が出ると他の部品が壊れる恐れがあるので、この部品、ダイオードを追加する。

長男:ダイオード…?

私:ダイオードの説明は別の機会に説明するね。そろそろ、回路を組んでみようか。部品はちゃんとデータシートを読まないといけないけど、今日は手持ちの部品から選ぶので、ちょっと違うやり方をする。

長男:どういうふうに?

私:手持ちの部品の中で大きい電流を流しても壊れない部品を選んでいるの。本来は電流のほかに、小ささ、値段、損失など、考慮するポイントが結構あるんだよ!

長男:わかった!

私:できた!電池の代わりにこの電源(安定化電源)を使ってみる。電圧は電池と同じ1.5Vにした。オシロをみて、黄色波形はSGからのON/OFF信号だ。緑はモーターに流れる電流だ。

私:SGのこれ(Duty)を1から99まで調整できる。1にするとONの信号がとても短い、モーターは?

長男:止まってる!

私:では、このつまみを回して、この数字(Duty)を大きくしてみて。

長男:音が大きくなる、モーターが速くなる!ONが長くなる!どこまで上げて良いの?

私:フルパワーは99、通常は75かな?

周波数25Hz, duty 75%

周波数25Hz, duty 25%

長男:75は通常速、5で止まる、高速は85?75とあまり変わらない・・・じゃ、通常速60、高速85、低速20位にしてみようかな・・・停止が1・・・、でも、カクカク言っていて、なんかディーゼル車みたい。結局止まっているけど電流が流れている?これ0に出来ないの?

私:そう、1でも電流は流れるよ。電流の最大値も大きくなっていない?これは止まっているのに無駄にエネルギーを消費していてよくないね。スピードを決めるとき、その辺、ちゃんと確認しよう。この“ON/OFF”ボタンで完全に停止できる。

長男:分かった!

私:今回はSGからON/OFFの信号を出しているけど次はもっと小さい部品から作らないといけないね。

長男:じゃ、レベル1クリアってこと?次はプログラミングも入る?

私:そう、プログラミングに入る。どんなICでやるのか調べて置くね。今日はここまででいい?

長男:分かった、ありがとう!じゃ、行くね!

私:はい、お疲れ!

あれっ!週末、結局仕事をしているじゃないの!?次世代のエンジニアが誕生するなら良いか!